【元警察官の視点】ストーカー被害を防ぐには限界がある?神戸ストーカー事件から見える限界値
1.はじめに
まずはじめに、今回、神戸市内で発生したストーカー事件におきまして、尊い命を奪われた被害者の方に、心よりお悔やみ申し上げます。ご遺族の皆さまにおかれましても、深い悲しみと大きなご苦しみの中にいらっしゃることと思います。謹んでお見舞い申し上げます。
本記事では、あくまでも元警察官という立場で、神戸市内で発生したストーカー事件(以下「神戸事件」という。)に対する考えを述べさせていただきたいと思います。
2.現場警察官から見た「限界」
ストーカー事件は、行政手続きと刑事手続きが両方関わるため、ストーカー事案を認知した際は、状況を見極めた適切な対応が必要です。
ここで、警察が発揮できる最大値は、行政手続きであれば『接近禁止命令』、刑事手続きであれば『逮捕(検挙)』であると考えていました。しかし、いずれにしても、危険なリスクが全くなくなるわけではありません。
たとえ、禁止命令を受けた場合であっても、普通にみなさんと同じ社会生活を送るわけですし、逮捕された場合であっても、出所して社会生活に復帰します。拘禁刑という判決を受けた場合であっても執行猶予が付く場合が多いし、略式刑で罰金を支払って出所してくる場合も少なくありません。そうです。加害者は、すぐに社会生活に復帰するのです。
3.防ぐのが難しい理由
個人的な感想ですが、逮捕(検挙)された加害者は、我に返るのか、再びストーカー行為をするようなことはほとんどありませんでした。反対に、検挙後、被害者側から加害者に復縁を求めるようなケースもあるため、ストーカー事案は、どのように進んでいくのか誰も予想できません。
話は逸れましたが、加害者が社会復帰する以上は、被害者対策と加害者対策を両方進めなくてはなりません。私はこの経過確認こそ、非常に難しく感じていました。
加害者や被害者それぞれの本当の心理は分かりません。
しかし、加害者の立場からすれば、『もう検挙されたのだから同じ相手にストーカー行為をするわけない。警察は関係ない。』のような心理に通常はあると思うし、被害者の立場からすれば、『もう検挙までしてもらったから大丈夫。』という心理状態になると思います。
もう警察と関わりたくない、面倒だという心理になってしまうと、それ以降の経過が警察では確認できなくなるので、本当に怖い思いをしていました。
怖い思いになる理由は、先日の川崎事件のような重大事件に発展するケースがあるからです。
加害者が『もうするわけないやん』という心理になってくれたのであれば、結果として検挙こそが最大の武器になりますが、加害者が、『あいつ絶対許さん』と逆上してしまった場合、結果として検挙が逆効果となってしまいます。
誰も予想できない結果が生まれるケースに発展する可能性があるからこそ、防ぐことが難しいと思っていました。
4.今後必要とされる法の整備
今後、さまざまな制度が見直され、再発防止に向けた対策が講じられるのでしょうが、正直、効果的なものは頭に浮かびません。
それは、ストーカー事件に限らず、どの事件にも言えることだからです。
殺人犯も性犯罪者も薬物常習者も社会に復帰します。これまで、そのような事への対策は取られたのでしょうか。
日本でも実現できるような現実的な対策があるのでしょうか。
被害者になり得る我々の自己防衛しか方法はないでしょうか。自己防衛ができない人が悪いのでしょうか。絶対にそのようなことはありません。今後の動きに注目です。
今後も思うことがあれば、こちらのブログに投稿したいと思います。
現状で思うこともあります。先日、職権で警察が加害者に警告できるようになったという報道を見ましたが、これも現場をまったく分かっていないなと思いました。