従業員名簿の作り方と保管義務 ― 風営法で求められる書類管理とは

スナックやキャバクラ、バーなどの風俗営業・深夜酒類提供飲食店を経営する際には、「従業員名簿」を正しく整備・保管しておくことが法律で義務づけられています。実際の立入検査でも重点的に確認される項目です。この記事では、従業員名簿に必要な記載事項、作成・保管の方法、違反時のリスクについて、行政書士の視点からわかりやすく解説します。



1. 従業員名簿の法的根拠と必要性

1-1 風営法における従業員名簿の位置づけ

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)では、営業者に対して従業員の名簿の作成・備付・保管義務が課されています。
これは、営業者が従業員の身元や年齢、勤務状況を把握し、法令遵守を徹底するための制度です。

特に、未成年者の就業防止や名義貸し防止の観点から、警察が立入検査で確認する重要書類の一つとされています。

1-2 なぜ従業員名簿が重要なのか

風営法における「従業員」には、キャスト・ホステス・ボーイ・調理担当・清掃員など、実際に店舗運営に関与する全ての人が含まれます。
そのため、「名簿に名前がない人が働いている」状態は無許可従業員の就労と見なされ、行政処分や営業停止の対象となるおそれがあります。


2. 従業員名簿に記載すべき項目

2-1 風営法で定められた必要記載事項

従業員名簿には、以下の内容を必ず記載する必要があります(施行規則第13条)。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 国籍(本籍)、現住所
  • 職務の内容
  • 採用年月日
  • 退職年月日
  • 写真(最近3か月以内のもの)

これらを漏れなく記載し、変更があった場合には速やかに訂正・更新します。

2-2 注意すべき実務上のポイント

実務上は、名簿の記載に加えて「本人確認資料(本籍地記載の住民票・パスポートなど)」のコピーを添付しておくことが望ましいです。
また、ホステスなどの源泉徴収や雇用契約が曖昧なケースでも、「実際に接客に従事している人」は必ず名簿に記載しておくことが安全です。


3. 名簿の作成・更新方法

3-1 作成のタイミングと更新義務

従業員を新たに雇用した場合、採用日までに名簿へ記載しておく必要があります。
退職時には、退職年月日を記載し、名簿を保存します。
従業員が頻繁に入れ替わる店舗では、月に1回など定期的に名簿の更新を行う体制を整えると安心です。

3-2 写真や身分証の添付管理について

従業員名簿に顔写真が添付されていることは望ましいことです。
顔が明確にわかるものであれば、スマートフォンで撮影したものでも構いません。
ただし、写真を貼り替える際は撮影日を明記し、古いものを廃棄せず保存しておくと信頼性が高まります。


4. 名簿の保管義務と期間

4-1 保管方法と管理責任者

従業員名簿は、営業所内に備え付けることが原則です。
事務所や別拠点に保管している場合、立入検査の際に「提示できない」と判断されることがあります。
名簿は営業者または管理者が責任を持って保管・管理しましょう。

4-2 保管期間と廃棄のルール

従業員名簿は、退職後3年間は保管する義務があります。
退職者の名簿をすぐに破棄すると、後日調査の際に問題となる場合があります。
紙でも電子データでも構いませんが、改ざんや紛失のないよう適切に保存しましょう。


5. 名簿不備によるリスクと行政対応

5-1 警察の立入検査でのチェックポイント

警察の立入検査では、以下の点が重点的に確認されます。

  • 名簿が備え付けられているか
  • 記載内容が最新か
  • 記載されていない従業員が勤務していないか

一点でも不備があると、口頭指導や行政処分に発展する可能性があります。

5-2 不備・未備付での処分事例と対策

実際に、従業員名簿を備え付けていなかったことを理由に、行政処分を受けた事例は数えきれないほどあります。
書類の整備不足は小さなミスに見えても、風営法上は重大な違反です。
定期的に名簿を見直し、行政書士に確認を依頼しておくことで、リスクを最小限に抑えることができます。


まとめ

従業員名簿は、風営法の遵守を示す「営業者の信用帳票」といえます。
形式的に作成するのではなく、常に最新の状態を保つことが重要です。
「何をどこまで記載すればいいかわからない」「警察の立入検査が不安」という方は、風営法に精通した行政書士に相談することで、安全で確実な営業を続けることができます。

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