【相続の気になる疑問③】内縁の妻(夫)に相続権はある?
「長年一緒に暮らしてきたのに、籍を入れていないだけで相続できないの?」――内縁関係にある方から、こうした相談は少なくありません。事実婚が増えている現代において、内縁の妻(夫)の相続問題は身近なテーマです。しかし法律上、内縁配偶者は“配偶者”とは扱われません。本記事では、内縁の妻(夫)に相続権はあるのか、例外や救済制度、生前対策の方法までをわかりやすく解説します。
1 内縁の妻(夫)に法定相続権はある?
1-1 法律上の配偶者とは
結論から言うと、内縁の妻(夫)には法定相続権はありません。
民法上の「配偶者」とは、法律上の婚姻届を提出した者を指します。戸籍上の配偶者でなければ、原則として相続人にはなりません。
そのため、どれだけ長年連れ添っていても、法律婚をしていなければ相続人としての地位は与えられないのです。
1-2 内縁関係が認められる条件
もっとも、内縁関係そのものは法律上一定の保護があります。
・婚姻意思がある
・共同生活の実態がある
・社会的に夫婦と認められている
これらの要件を満たす場合、社会保障や損害賠償請求などで保護されることはあります。しかし、相続権は別問題です。
2 相続できない場合の現実
2-1 財産は誰にいくのか
内縁配偶者に相続権がない場合、財産は法定相続人に渡ります。
例えば、被相続人に子どもがいれば子どもへ、子どもがいなければ親や兄弟姉妹へ相続されます。
内縁の妻(夫)は、原則として何も受け取れない可能性があります。
2-2 住み続けられないリスク
特に問題になるのが自宅です。
家が被相続人名義で、相続人が別にいる場合、内縁配偶者は立ち退きを求められる可能性があります。
長年暮らしてきた住まいを失うリスクがある点は、非常に深刻です。
3 内縁の妻(夫)を守る方法
3-1 遺言書の作成
最も確実な方法は、遺言書を作成することです。
「すべての財産を内縁の妻に遺贈する」といった内容を明記すれば、法的に財産を渡すことが可能です。
ただし、法定相続人には遺留分があります。そのため、完全に争いを防ぐには遺留分対策も必要です。
3-2 生命保険や生前贈与の活用
生命保険金は受取人固有の財産とされるため、受取人を内縁配偶者に指定しておけば、相続とは別に受け取ることができます。
また、生前贈与によって財産を移転しておく方法もあります。ただし税務面の検討が必要です。
4 認められる可能性のある請求権
4-1 特別縁故者としての申立て
法定相続人がいない場合、内縁配偶者は家庭裁判所に「特別縁故者」として財産分与を申し立てることができます。
これは例外的な制度であり、相続人がいない場合に限られます。
必ず認められるわけではありませんが、一定の救済措置として存在しています。
4-2 死亡退職金や保険金の扱い
企業の死亡退職金や保険金は、就業規則や契約内容によって内縁配偶者が受取人と認められることがあります。
このように、相続権がなくても受け取れる財産がある点は押さえておくべきポイントです。
5 トラブルを防ぐために今できること
5-1 家族との事前共有
内縁関係は、法定相続人とのトラブルになりやすい分野です。
被相続人が生前に家族へ意思を伝えておくことで、紛争のリスクを下げられます。
5-2 専門家への早期相談
内縁関係の相続は、法律・税金・家族関係が複雑に絡みます。
早めに専門家へ相談すれば、
・遺言書の適切な作成
・遺留分への対策
・将来トラブルの予防策
を総合的に検討できます。
まとめ
内縁の妻(夫)には、原則として法定相続権はありません。長年連れ添っていても、法律婚とは扱いが異なります。
しかし、遺言書の作成や生命保険の活用など、生前対策を講じることで財産を守ることは可能です。
「籍を入れていないから大丈夫」と安心せず、早めに準備を進めることが、内縁配偶者を守る最善の方法といえるでしょう。

